山本安志法律事務所 − 事務所ニュース


7号(2003年11月発行)

巻頭言 ◆ 弁護士 山本安志

10月に韓国法曹界IT視察に行ってきました。日本においても、弁護士がITを使って判例や文献、過去の事例などをすばやく集積・整理できれば、これらを示すことで依頼者にわかりやすい説明ができ、また紙ベースでの煩雑な作業から開放されることによりさらに質の高い弁護士業務に力を注げるようになります。さらに、電子ファイルの通信・交換で、時間と作業の軽減を図ることは常識となりつつあります。当事務所も、よりよい依頼者サービスの充実を図るため、法律事務所のIT化に取り組みます。

<特集> 裁判所までひとっ跳び:弁護士に依頼した事件どうなるの?

家庭裁判所の利用の手引き

韓国法曹界のIT事情 − 弁護士 山本安志

 2003年10月6,7日の両日、日本弁護士連合会の調査で、韓国法曹界のIT事情を視察してきました。韓国の大法院と大検察庁のIT化についていえば、日本の最高裁判所と最高検察庁より韓国のほうが進んでいました。

 韓国では、国民が自分で、裁判所のホームページにおいて事件の進行を確認できますし、判例、法令や法律文献、全国の競売情報も自分で検索できます。韓国では、弁護士に依頼せずに、このような情報を検索しながら、民間の訴訟援助会社の援助を受けて自分で裁判を進めていくことができるようになっていました。また、検察庁に告訴した事件についても、捜査中であるか、起訴されたかをインターネットで確認できるのです。また、裁判官や検察官も、これまでに蓄積してきた膨大な判決や捜査資料などを自由に検索して、裁判等をスムーズに進められるシステムを構築していました。さらに数年後には、民事事件も刑事事件もすべて紙のない電子法廷を行うとのことでした。

 一方、ソウル地方弁護士会の取り組みはこれらに比べれば遅れ気味ですが、ほとんどの弁護士がEメールを使えるなどその基盤は日本を超えるものがありました。また、韓国での特徴は、民間の会社が、弁護士と提携して、訴訟援助やメール等の安価な法律相談が行う仕組みが普及していることです。日本の弁護士も、韓国の民間会社に負けないように、弁護士が関与しつつ、気軽に相談や訴訟の援助ができる責任ある仕組みを検討すべきだと思いました。

 但し、法律事務所のホームページは、一部大手法律事務所を除けば、韓国でもあまり活用されていないようです。自画自賛ではありますが、当事務所ほど充実したホームページはあまり見当たらないようでした。
 韓国大法院等のコンピュータールームの大きさには圧倒されましたが、これからの日本の目指す方向についての確証を得た気がします。今後、この経験を生かして依頼者に対するサービスを充実させていきたいと思っています。

クーロン人間作っていいの? − 弁護士 新井聡子

 10月に愛媛県松山市で、日弁連人権擁護大会が開催されました。私は、大会のシンポジウムのひとつ、「クローン人間作っていいの?―先端医療技術と人間の尊厳―」に実行委員として参加しました。

 皆さんは、第三者の女性に子どもを産んでもらう代理出産をどう考えますか。手術で採取された体の組織がその後無断で研究に利用されたとしたら、どう思いますか。人間の受精卵を壊して研究利用したり、受精卵からクローン人間をも生み出しうるクローン胚を作ったりすることは許されると考えますか。

 近年、先端医科学研究は急速に進歩しています。しかし、医師の患者・被験者に対する説明が十分でないことも多く、先端医療技術が適正に実施されているとは言いがたい状況にあります。また、前述のような問題は、仮に当該患者または被験者の承諾があったとしても倫理的に許されることなのかも議論しなければなりません。

 シンポジウムでは、患者・被験者の権利はどのように保障されるべきか、また医療にかかわる科学技術の利用はどこまで許されるのか、さらにはそれらの技術が適正に実施されるためにはどうしたらよいのかを研究してきました。

 もちろん、簡単に結論の出せる問題ではありません。しかし、私たちが日常生活においてあまり意識しない問題(というより知らされていない問題)であるがゆえに、社会に問題提起をした上で、今後の議論を継続的に行うことが重要です。そこで、シンポジウムでは、被験者保護法の制定と、これらの問題の情報提供や市民参加型の議論の場を提供する機関・システムの創設を提言しました。

 シンポジウムには、弁護士のほか地元の高校生が多数出席し、問題提起という所期の目的を十分達成できたものと思います。

成年後見制度について − 弁護士 徳田 暁

 成年後見制度とは,障害や痴呆のため判断能力が十分でない本人が,財産的被害にあわないように,本人の行為を監督・代理したり,本人の財産を管理したりする成年後見人(後見人・保佐人・補助人)をつけ,また,本人が勝手にやった不利益な契約を取り消せるとするものです。平成11年の民法改正で導入されました。

 この改正前にも,禁治産・準禁治産という同様の制度がありましたが,名称が差別的であることや,より本人の意思や置かれた状況に即したきめ細かい保護をはかる必要があることなどから,改正がされたのです。

 具体的には,禁治産・準禁治産から後見・保佐という名称に代わり,また,補助という,本人1人の判断では不安が残る特定の事柄だけを選んで,その事柄を補助人の同意なしに行ったときは事後的に取り消せる制度も新たに創設されました。そして,成年後見人になった人は,本人の意思や心身の状態にも配慮する必要があることも明らかにされました。

 この点,弁護士をしていると,障害や痴呆があり,利益・不利益を十分に判断することができないがために,例えば,訪問販売の食い物にされている,言葉巧みに自分の不動産を担保に入れられてしまうケースに多く遭遇します。

 そのため,本人保護を目指す成年後見制度の必要性は高く,多くの人が,この制度を知って,活用できればよいと考えます。ただ,この制度は,なにぶん新しいため,例えば,成年後見人は,本人の意思や心身の状態にも配慮する必要があるといっても,具体的にはどのようなことをする必要があるのかなど,未解決の問題もあります。また,いくら成年後見人に取消権があるといっても,いざ本人に勝手に財産を処分されてしまうと,それを取り戻すことは大変困難な場合もあります。

 とすると,本当は,一番大事なのは,いつも身近で本人のことを見守ってくれる人の存在なのかも知れませんね。核家族化の高齢化社会,親亡き後の障害者,考えれば考えるほど難しい問題です。

私の中の海 − 弁護士 佐野高王

 私は生まれたときからずっと海の近くで育ちました。泳ぐのもプールより海。海が好きです。
 海好きがこうじて学生のころサーフィンを始め,以後年間通じて海に入るようになりました。車の免許を取るとともに,神奈川から千葉,茨城,静岡へと行動半径を広げていきました。
 近くの海で波に乗れるようになると,海外などもっと見知らぬ土地の海に入ってみたくなります。ですから当然旅行の目的地も海のあるところに。海に入って波に乗ることで旅先の土地を感じてきました。
 司法試験に合格し,司法研修所に入るまでの間,約1か月間海外に滞在して毎日海に入っていたこともありました。
海に入っていると,それまでの日常生活で心に溜まった澱のようなものが海の中へ流れ出ていきます。今までも,辛いとき海に入って気持ちの整理をつけたことが何度もありました。
 弁護士として仕事をするようになってからは,やはり海へ行く頻度は落ちました。様々な事件のことが頭から離れず,次第に海へ行く意欲も減退してきていたように思います。

  しかし今年の夏休み,以前旅先で出会った人の家を訪ね,海の目の前に立つ家に泊まり,海に入る,寝る,食べる(飲む)を繰り返す往年の生活をする機会に恵まれました。
 また,宮古島へも行き,足の着くところにも熱帯魚と珊瑚があふれている,まるで水槽の中のような素晴らしく美しい海を体験しました。
 そして9日間の夏休みが終わるころには,頭の中がスッキリと晴れ,また仕事に真剣かつ誠実に取り組んでいこうという気持ちが生まれていました。

 今年の夏は,自分の中での海の大切さをあらためて知った夏でした。これからも,平日は仕事で真剣勝負し,休日に海で気分転換して,また新しい週に新鮮な心でぶつかっていくような生活を作っていきたいです。

子供に対する虐待 − 弁護士 八木美紀子

 ここ数年,子どもに対する虐待が社会的な問題となっています。皆さんは,遠い世界の出来事と考えますか。それとも身近に起こりうる問題と考えますか。

 虐待と一口にいってもその態様は様々です。身体的虐待,性的虐待,心理的虐待はもちろんのこと,健康的な成長に必要な適切な養育や世話をしないネグレクトも虐待に含まれます。適切な医療を受けさせない行為や医者に子どもについて虚偽の症状を訴えたり,故意に病気やけがを負わせたりして,本来必要のない検査や治療,手術などを受けさせる行為(「代理によるミュンヒハウゼン症候群」というそうです。)も虐待にあたります。

 虐待は,子どもに様々な影響を与えます。発育の遅れ,後遺障害などの身体への影響だけでなく,感情をコントロールできない,自分に対するマイナスイメージを払拭できないなど情緒面に対する影響もあります。虐待を受けた子どもの中には,対人関係がうまく結べず,自傷行為に及んだり,売春や非行につながってしまうこともあるそうです。虐待によって受けた心の傷は,虐待される状況がなくなってもなお残るのです。

 私は横浜弁護士会の虐待問題部会に所属しています。この1年,この部会を通じて,事件を担当させていただいたり,研修会に参加したりしてきました。その経験を通じて感じたことは,それが子どもの生死にかかわるような深刻なものに発展するかは別の問題として,虐待は特別なことではない,身近に起こりうる問題だということです。

 児童虐待防止法の改正をはじめ,虐待に関する専門家のネットワーク作りなど,虐待を防止するための取り組みがいろいろなところで行われています。虐待を防止する最も有効な方法は,社会(子どもの周りにいる大人)が虐待を受けている子どもがいないかどうかを常に見守ることだと思います。

新人です。よろしくお願いいたします - 事務局K

 人生、どこにどんな縁があるのか分からないものです。
 学生時代は昆虫の研究をし、毎日実験を繰り返す生活をしていた私が、まさか法律の世界に足を踏み入れるなど、誰が予測できたでしょうか。面接時に山本先生から「応用昆虫学って何?」と質問されたことを思うと、今この事務所で仕事をしているのも、昆虫達のおかげかもしれません。
 事務所での私は、まさに羽化したてのイモ虫状態。事件の事務局担当部分について、弁護士から依頼者に合った処理法を教えてもらい、さらに先輩事務局から、効率のよい消化法の知恵を貸していただく。後は想像力と資料から、自分にあった栄養分の取り方を考えて、日々の成長につなげてゆく。
 しかし、何でも言うのは簡単、やるのは困難。しょっちゅう消化不良を起こして挙動不審になる私に、判るまで親切に教えてくれる先生方や事務局の皆さんに感謝しつつ、一日も早く大きなイモ虫・・・いや、蝶になれるように頑張ります! 

<お題> 私のイチ押しはこれ!お勧めの映画、心に残る映画、あれこれ

ニューシネマパラダイス − 事務局 T

 映画の黄金時代を描いた、監督ジュゼッぺ・トルナトーレの自伝的物語で、1989年公開のイタリア映画です。
 涙には、いろんな種類がある。この映画を観て流した涙は、これまでとは全く違った種類に思えた。親友であり、人生の師であるアルフレードの遺品フィルムを、成功を収めた壮年期のトトが鑑賞するラストシーン。
 それは、映写技師のアルフレードの仕事場であるパラダイス座の映写室に入りこみ、検閲に引っかかって切り取られたフィルムの山を見て、幼いトトが欲しがったフィルムを、繋ぎあわせたものだった。
 エンニオ・モリコーネのサウンドに載せ、ラッシュされる幾つものキスシーン。
 「ノスタルジー」という一言で片付けてしまえば簡単だ。けれど、蘇ってくる、誰しもが持っているであろう、セピア色に染まった、しかし輝ける宝物のような自分の少女時代が、トトの少年時代とニ重写しになる。
 抑えきれない、感情の昂ぶりの結果ではない。涌き出る泉のような涙が、私の瞳から、ただサラサラと溢れ落ちてくるのだった。

フォレストガンプ(一期一会) − 事務局 H

 1994年のアメリカ映画です。原作は,アメリカ人ウィンストン・グルームの小説。2時間22分という長さを,飽きさせません。
 生まれたときからの足の弱さとIQの低さ、このハンディキャップを持つ主人公フォレスト・ガンプが,のちにはアメリカのヒーローになるという,成功物語です。
 しかし,本人には有名になろうとか,富と栄光を手に入れるなどの意欲はなく,ただ懐かしそうにバス停で自分の過去を語ります。
 その語りは,富も栄光も得たはずの主人公の無欲さがよくわかります。
 観ると人生に対して,一番大切なことは何かを気づかされるような気がします。

リトルダンサー - 事務局 AM

 この映画は少年がバレエダンサーになるまでの葛藤を描いた映画です。
 「男の子がバレエダンサーになりたいなんて」「男は強くあるべきだ」という父親は少年の夢、才能、可能性に理解を示してくれません。しかし少年は諦めず踊り続け、夢に向かって努力するのです。
 いつの時代にも「男だから」「女だから」という偏見があるように感じます。周りに理解されないことで、可能性が潰れてしまうのは悲しいことです。
 少年は、そんな偏見の中、多くの問題にぶつかりながらも、自分の夢を諦めず、追い求めます。
 悩みながらも前に進む少年の姿に、諦めず努力する大切さ、そして、自分を信じる強さを教えられる気がします。

私の一押しはこれ:天使にラブソングを − 事務局 YK

 なんてたって、「天使にラブソングを」!
 我が家には「天使にラブソングを1」はレーザーディスク、「天使にラブソングを2」のDVDもある位大好きな映画。何度でも繰り返し見たいし、映画を見終わった後はとても元気になれます。
 この映画を初めて映画館で見た時は(そう今は無き、馬車道にあった東宝会館でした)すっごく感動して、次の日もまた見に行ったほど、本当にいい映画。主役のウーピー・ゴールドバーグの役柄も最高だし、映画の中での歌のシーンが本当にイイ!
 私自身、歌を聴くのももちろん大好きで、コンサートやライブにも行きますが、これからの目標としては、ニューヨークの協会でゴスペルを聴き、ストリートコーラスも聴けたら最高です。

オリエンタルリズム − 事務局 AC

 北野武監督の活躍ぶりは耳目に新しいが、彼の評価は「北野ブルー」に代表されるそのオリエンタルな色彩感覚によるところが大きい。和の色彩に東洋的精神世界が投影されているのである。
 しかしながら私は、東洋的映画と言えば、大庭秀雄監督の『雪国』を思い出す。あまりにも有名な原作の著者川端康成はオリエンタリズムの代表格だが、作中もっとも彼の筆が冴えるのは、一年ぶりに愛人を尋ねていった主人公が「この指が覚えていた」とつぶやくエロティックな場面である。これを映像としてどう表現するか?
 この命題に大庭は鮮やかに答えている。旅館の一室での二人の会話の後、カメラはそのまま障子に移り、揺らめく蝋燭の炎をじっと映し出す。炎は音も無く静かにめらめら燃える。大庭はたったこれだけで二人の関係と愛憎を描ききったのである。しかもこの映画はモノクロなのだが観る側に鮮やかな朱赤を刻み付ける。これぞ日本の美学と、感嘆しきりな作品である。

修習の思い出 − 57期修習生

  私は今年の7月から、弁護修習のため山本安志法律事務所で研修させていただきました。弁護修習とは、司法試験に合格した後、弁護士・検察官・裁判官となる前に行う研修のうち、実際に法律事務所に配属されて見習いをする実務修習期間です。弁護修習の前には前期修習というものがあり、三ヶ月間埼玉の司法研修所というところで約1200人の司法修習生が集まり、弁護士・検察官・裁判官の教官から講義形式の研修を受けました。
 私は、社会経験のないままこの法曹界(といってもまだ見習い期間ですが)に飛び込んだために、初めて見る「社会人の世界」にとても刺激を受けました。依頼者との法律相談、相手方代理人との交渉等、毎日が勉強になることばかりで、自分の成長に役立ったのは言うまでもありません。山本先生がくださった「人はミスをするもの。ミスしたあと、いかにリカバリーするかが問題」という言葉は非常に前向きで、心に残る言葉の一つです。
 山本先生にかかると複雑な問題が鮮やかに解決していきます。自分が弁護士になっても山本先生のように上手くできるものか。まだまだこれから修行画筆用です。
 また山本先生はじめ事務所の諸先生方には関内の美味しいお店にも数多く連れて行って頂きました。天ぷら、焼き鳥、スペイン料理等、少々飲み過ぎてしまったことも何度か・・・。山本先生は弁護士になられてからずっとこちらにいらっしゃるので、関内は先生の庭なのです。この三ヶ月で若干私のお腹が出てしまったのは秘密ですよ。
 事務所の諸先生方だけでなく事務局の方々にも大変お世話になりました。三ヶ月間迷惑をおかけしてばかりでしたが、山本安志法律事務所で得た知識・経験を糧に、これからもがんばっていこうと思います。本当にありがとうございました。